「ねーちゃんは?」


午前8時半。
阿部勇樹自宅マンション。
遊びに来ている鈴木啓太は左右を見回し聞いた。
同じく隼磨や嘉人も部屋の中に入ってくる。

「そうッスよ、ちゃん見ないと来た意味が・・・」

ちゃん見て、勇樹のベットで寝ると。」

好き放題。
勇樹はやれやれと溜息を付く。

「もうすぐ高校行く時間だから部屋から出てくると思うけど。」

そう、は勇樹の妹。
しょっちゅう此処に来ている3人は顔馴染みなのだ。
そして何気に惚れていたりもする。
その時リビングにが入って来た。

「おはよーって、3人共来てたんだね〜。」

ちゃん高校?たまには休もうぜ!!」

「嘉人、は受験生なんだよ。」

「ちっ。」

勇樹との口喧嘩を見てクスっと笑う
そして鞄を持ち上げた。

「じゃあ行ってくるねv」

いってらーと返す3人に対し、呼び止める兄・勇樹。

「あ、。」

「ん?」

「今日の夕食何が良い?の好きなもんにするから。」

「んーと・・・お鍋!!最近かなり寒いしね。」

笑顔で返すに勇樹は頷く。



「了解。プレゼントも楽しみにしてろよ?」



は明るく勿論!!というと家を出て行った。
首を傾げる啓太・隼磨・嘉人。

「勇樹ー今日なんかあんの?」

「別に啓太達には関係ない事だって。」

「教えてくれても良いじゃないスか〜。」

勇樹は頭を軽く掻いてから言った。




「今日の誕生日なんだよ。」




だから関係ないって言ったろ?
そんな目で3人を見る。
しかしこっちからすれば関係大アリ。
目を見開く嘉人。

「マジで!!?
何で教えてくんなかったんだよ!!」

「ヤべっ、金置いて来ちゃったじゃないスかー!!」

「ハユ、俺も俺も。勇樹にたかる気満々だったからなぁ。」

「・・・・・・俺金貸さないから。」

勇樹即答。
考え込む3人。
そこで啓太がポンと手を打った。



「あのさぁ、ケーキ作るとかはー?」




・・・作れんの?




これが全員の感想。
しかし他に方法がない。
3人は勇樹から台所を借りる事にした。

「本気で作る気・・・?」

疑いの目をしながら料理の本を渡す勇樹。
エプロンをしながら隼磨が頷く。

「大丈夫スよ。本の真似すれば良いだけなんですから。」

「まぁそりゃそうだけど・・・」

「いいからいいから。勇樹はプレゼント買いに行って来いって。」

嘉人が外へ無理やり押し出す。
そして腕をまくってやる気満々の体勢。
啓太が本を読む。

「最初にー『卵を割って卵黄と卵白に分けます』だって。」

「あ、それ俺やりますよ!!」

隼磨が元気よく挙手し、卵を冷蔵庫から取り出す。
啓太は次の工程を読み上げた。

「んで、ハユが卵白泡立てるからー、
嘉人は生クリーム作れば良いみてえ。」

「・・・生クリームは?」

「ない。」



オイ



すぐに勇樹の携帯に電話をかける。

『何だよ?』

「なぁ、近くにスーパーある?」

『・・・あるけど何で?』

「生クリーム買って来てー。
ついでに苺とあとビール何本か。」

『俺が!?恥ずかしいから嫌だってい・・・』


「よろしく。」



ブチッ



電源を切る。
その直後隼磨の方から変な音が。


グチャ


嘉人と啓太が振り返る。
隼磨の手は黄色だらけ。

「お前何やってんだ
―――!!??」

「いや、片手でやれたら格好良いなぁなんて・・・」

どうやら挑戦して潰してしまったらしい。
溜息をつく啓太。

「出来ない癖に見栄張んなよな〜。
ボールにめっちゃ殻入ってんじゃん。」

「取りますから大丈夫ですって!!
もし混ざっててもカルシウムになりますし♪」



・・・植木鉢の肥料かよ。



勇樹が居れば確実にそうツッコんでいただろう。
しかし残念ながらこの場にはいない。
3人は作業を続け出す。

「最終的には混ぜんだから良っか。
薄力粉と砂糖入れてー更にかき混ぜて型に入れるんだって。」

「ハユじゃ駄目だし俺やるよ。」

嘉人がへらを受け取り作業開始。
その時文句を言いながら勇樹帰宅。
啓太が台所から顔を出した。

「おかえりー。」

「何で俺がこんなの買って来なくちゃなんだよ。ホラ!!」

「サンキュ〜、これから使うとこだったんだ。」

生クリームと苺を受け取り引き返そうとする啓太。
ソファに腰を下ろすと勇樹は聞いた。

「・・・順調なのか?」

「うん、ヨユー。だから邪魔すんなよ?」

啓太の言葉にハイハイと頷く。
そして啓太はキッチンへ。

「じゃあハユ生クリーム作ってー?
俺は苺切るからさぁ。」

「オッケーです!!」

「啓太、型に流したら電子レンジで良いんだよな?」

嘉人の質問に頷く啓太。
しかし本を読み直しちょっと待ての合図。

「何か空気抜いて下さいって書いてあるんだけど。」

「空気?何ソレ?んなもんケーキに入ってる訳ねえじゃん。」

指示を無視しレンジのスイッチをオンにする。
啓太もそうだよなと大して気にはしていない様子。
隼磨も生クリーム作りを終えしばし待つ。
焼き始めて25分位経っただろうか。




ボンッ!!!!!!!!!!!!




レンジが爆発した。



ぎょっとする3人。
勇樹が慌てて走ってくる。


「何があった!!??」


ヤバイ。
顔を見合わせる啓太と嘉人。
隼磨はレンジの前に立ち証拠を隠す。

「あー・・・んとハユが転んじゃってさー。」

「そ、そうそう!!馬鹿だよな。ハハハ。」

「俺ドジなんですよ〜。
とにかく心配ないですから!!」

頭に疑問符を浮かべつつも帰っていく勇樹。
嘉人はふーと汗を拭う。

「焦ったぁ。バレたら俺殺されると思ったし。」

「それよりケーキは?」



「「「・・・・・・・・・」」」



隼磨が恐る恐るレンジを開ける。
中には黒くて潰れた物体Xが。
沈黙する3人。

「しっ市販のケーキだってこんなもんじゃね?」

「そっそうだよな!!
生クリーム塗れば普通になるって!!」

啓太と嘉人が言う。
隼磨は自分の作った生クリームを持ってきた。
その中身を見て啓太が首を傾げる。

「ハユ。」

「はい?」



「生クリームってこんなドロドロしてるっけ?」



何か牛乳みたいなんですけど。
そんな印象の生クリーム(?)
隼磨はアレぇ?と頭を掻く。

「俺書いてある通りに砂糖入れましたよ?」

「かき混ぜるとか要らないっけ?」

「多分書いてなかったと・・・」


「じゃあこれで良いのか。」



無事納得



「塗っても塗っても染み込むなぁ。」

嘉人が作業に飽きてきたように言う。
腰に手をあてて返す啓太。



「誰だよケーキ作ろうなんて言った奴はー。」



お前だよ。



「とにかく本の通りにやりましたし。」

「そうそう、コレで良いんだって。」



それからさらに10分後。
啓太が苺を乗せ終えた。



「「「出来上がりー!!!」」」



蓋を被せてテーブルの方に持っていく。
雑誌を読んでいた勇樹が顔を上げた。

「何?出来たの?」

「ハイ、初ケーキ作り無事終わりました!!」

満足そうな隼磨。
敢えて中身は見せようとしないのだが。
勇樹はボソッと一言呟いた。



「・・・頼むから俺の妹殺すなよな。」







「ただいまー。」


そして午後6時。
高校からが帰って来た。
テーブルには鍋の用意が完璧にしてある。
勇樹が台所が空いた後即行で作ったのだ。
ちゃっかり啓太・嘉人・隼磨も参加し、
5人で小さな誕生日パーティーのような雰囲気になった。

「やっぱ勇樹兄料理上手いよねー凄い美味しいv」

「そりゃどうも。・・・ハイ。」

勇樹が何か手渡す。
綺麗にラッピングされたソレは勿論プレゼント。
リボンを解き中身を見る。


「ピアスだ!!可愛いーvvv」


中にはシルバーの十字架のピアス。
早速耳につけるに勇樹も嬉しそうだ。



、18歳の誕生日おめでとう。」



「有難う!!」


勇樹に抱きつく。
3人もとうとうケーキをの目の前に出した。
まだ中身が見えないので不思議そうな顔をする

「コレ、何?」

ちゃんいない間に俺らで作ったケーキ。」

「嘘ー!?かなり嬉しい♪」

3人は蓋を開けた。



「「「 誕生日オメデトウ!!!! 」」」



物体Xを見た勇樹は絶句。
隼磨は食べ易い大きさに切ってに渡した。

「早く食べてみて?」

「うっうん・・・」

引き気味の
逆サイドでは勇樹が啓太に耳打ちしている。

「おい。」

「ん?」

「味見ちゃんとしたんだろうな?」




「あ、忘れてた。」




食うな!!
そう思った時にはすでに口に運んでいた。
しばしの沈黙。
そしては笑って言った。



「おっ、美味しいよ?」



3人はガッツポーズ。

「よっしゃー!!作った甲斐あった!!」

「あ、ヤベ、帰らないと明日の試合間に合わないス!!」

「今度はプレゼント持参で来るな〜。」

各々そう言うと勇樹家を後にする。
残された阿部兄妹。
勇樹がチラっとケーキを見る。
そして

、一口頂戴?」

「え、あ、駄目・・・」

慌てて止めるを抑え、勇樹は口に入れた。
一口二口と噛み締める。


生クリームがしょっぱい。(=塩と砂糖間違えた)


粉っぽい(=小麦粉をふるいにかけてない)


がりッ(=卵の殻)


モサモサ(=空気抜いてない)


・・・苦い(=ブランデーの変わりにビール入れた)




「おえっ!!!!」




その後勇樹がを即行で病院に連れて行った事は言うまでもない。



END?




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