「ん?何で準備してへんの?」


某日、午後1時。
車のキー片手に彼女であるの家を訪れた
松井大輔はパジャマ姿のを見て首を傾げる。

「準備って?」

「昨日言ったやん、出掛けるて。」

「そんなの聞いてないし!!」

驚きながら言う
大輔は滅多にデートしようとはしない。
何故なら大輔にとってオフ日=徹底的に休む日なのだ。
から誘っても
“明日の練習しんどくなるから嫌や”
“昨日の試合で疲れとんねん”
など結局の部屋で一日中寝ている事が大半。
昨日も家に行くと電話で伝えただけ。
が叫ぶのも無理はない。
大輔はきょとんとする。

「言ってへんかったっけ?
まぁええわ、早ぅ準備せえや。」

「んもーちゃんと言っといてよ馬鹿!!」

平然とする大輔に怒りつつも久々の2人での外出。
は素早く着替えと化粧を終えた。





「はい、お待たせ!!」


バックを持って玄関の所に行く。
大輔はゆっくりと立ち上がった。

「ほな行こか。」

そして車に乗り込む2人。
はエンジンをかける大輔の方を見た。

「それにしても急に出掛けるなんてどうかしたの?」

「は!??」

の質問に大輔は眉をひそめる。
まるでそんな質問する意味が分からないという風に。

「いや、こっちがは?なんだけど。」

「お前・・・アホやなぁ。」

「何それ!?」

「とにかく出掛けようや。」

アクセルを踏み車をスタートさせる。
腑に落ちていないという表情をしつつも大人しく従う

「ねぇ、何処行くの?」

「せやなぁ…取り敢えずはの好きなとこでええよ。」

「ホント!?じゃあ映画!!
凄い観たい奴あったんだよねぇ♪」

「了ー解。丁度近くにあるしな。」





「あー!!もう始まっちゃってる・・・」


10分程車を走らせて映画館に着く。
上映表を見たは溜息をついた。
そのの頭にポンと手をのせる大輔。

「仕方ないから他ので我慢せえや。」

「んー・・・じゃあハリーポッターvvv」

「はい却下。」

「何で!?面白そうじゃん!!」

「そんなメルヘンチックなん観れるかい。
あ、コッチにしようや、外国版『リング』」

ニヤッと笑う大輔。
は何度も首を横に振る。

「嫌ー!!怖いの苦手なの知ってるくせに!!」

「俺が観たいから決定。」

有無を言わさず連れて行かれる。
そして上映。
ただでさえ恐ろしい話にハリウッドの特殊技術がプラス。
観終えた頃のの表情は青白かった。


・・・泣きすぎやて。」


大輔が苦笑しながら言う。
からしてみれば笑い事ではないのだが。

「最っ低!!もう死んでも大輔と映画行かない!!」

「悪かったて。機嫌直そうやー。な?」

「大輔なんか嫌いですー。」

拗ねる
車に戻ってもずっと窓の方にそっぽ向いている。
運転しながらもチラチラ横を見る大輔。

「ごめんて。」

「・・・・・」

ちゃーん、愛しとるからー。」

「そう言えば許されると思ったら大間違いです。」

かなりご立腹。
やれやれと頭を掻き大輔はある所で車を止める。
目の前には大型ジュエリーショップが。

「…もっと上機嫌で連れてきたかったんやけどなぁ。」

「大輔?」

いきなり来る予定のない所で降ろされ不思議そうな
そのの背中を大輔が押して入店。


「すんません、頼んだもん出来てます?」


大輔の言葉にカウンターにいた店員は笑顔で頷く。
はネックレスやらピアスやらを楽しそうに眺めている。

「キレー・・・」

。」

「へ?」

大輔に呼ばれ顔を上げる。
そして何かを渡された。

「ハイ。」

「指輪だぁ・・・でも何で?」

嬉しそうにしながらも頭には疑問符。
大輔はいい加減にしろという顔。



「何でって・・・今日お前の誕生日やん。」



茫然。
完璧にすっかり忘れていたのだ。
鈍感さに磨きがかかっている。
そして2人は店を出た。
の機嫌は勿論直っている。

「大輔アリガトー凄い感動!!」

「あのさぁ・・・」

「ん?」


指輪を眺めながらお礼をするに大輔は勇気を振り絞って言った。




「結婚せぇへん?」




ゆっくりと大輔の方に向き直る
大輔はの目を見つめ続ける。

「云うのの誕生日にしようてずっと決めててん。」

「大輔・・・」

「もしOKならこのまま婚姻届書きに行きたいんやけど。」

「んー・・・」

考える
すぐにOKを貰えると思っていた大輔は少々ショック気味。

「大輔、1つお願いがあるんだけど。」

「何?」


「言って?誕生日おめでとうって。」


が笑顔で言う。
お安い御用とばかりに大輔は頷く。




「おめでとう。
これから一生言い続けたるわ。」




END☆



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