「んー何忘れてるんだろう?」


自宅マンションのリビング。
カーペットに座り腕を組んで森崎和幸は呟いた。
オフ日の為ソファーの上でゴロゴロしている
双子の弟浩司が声の方を振り返る。

「どうした?」

「今日物凄く大切な日だった気がして。
朝から考えてるんだけど・・・思い出せなくてさ。」

本日はもう午後11時をまわった。
一体何十時間考えれば気が済むのだろう。
浩司は首を傾げる。

「大事な日?和幸、カレンダー見てみれば?」

「そっか。サンキュ、今調べる。」

最近全く使わない為壁の飾りと化している
ソレを和幸はぺラっと捲った。

「あ、やっぱ印付いてる。」

「何て?」

和幸が顔を紙面に近づける。


「何々、大好きなの・・・」


そこまで読んだ兄とそこまで聞いた弟は同時に目を見開いた。
和幸の声が震える。

「浩司・・・今日って、今日って!!」




「「 の誕生日だ!!!!!!!! 」」




慌てる2人。
浩司はガバッと起き上がり、
和幸は左右をウロウロ挙動不審に動く。
は2人の3つ年下の幼馴染。

と、思ってるのは多分本人だけで。

少なくともこの双子はかなり前からを一途に想い続けている。
現在森崎兄弟はサンフレッチェ広島の独身寮にいる。
の住むアパートまでは車で15分位といったところだろう。

の誕生日忘れるなんて俺とした事が!!」

「浩司、プレゼント買って今から行こう!!」

取りあえずすぐに家を出て車に乗り込む。
運転するのは浩司で助手席では和幸が財布の確認。

「1万しか入ってない・・・」

「安っ!!持って来いよなぁ。」

「まぁ浩司が持って来てるなら良いじゃん。」

和幸は浩司の財布をあさる。



「・・・8千900円・・・」



自分より少ないじゃないか。
絶句する和幸に驚いた表情の浩司。

「は!?そんなわけ・・・あ
――――!!!!!」

「なっ何?」



「この間CD衝動買いしたんだった・・・」



死ぬほど悔しそうな浩司。
やれやれと和幸は溜息をつく。

「どの道のアパートまでに買う所なさそうだしな。」

「花屋とかなかったっけ?」

「浩司・・・今何時だと思ってんの?」

和幸は時計を見せた。
午後11時20分。
コンビニ以外の店は確実に閉まっているどころか
あと40分程での誕生日が終わってしまう。

「あ、花屋。…開いてる訳ないよなぁ。」

「・・・そうだ、浩司、車止めて!!」

「は!?」

和幸がが花屋の前で言う。
何事かと思う浩司。
車から降りた和幸はとんでもない行動に出た。



「すいません!!花欲しいんですけど!!」



シャッターをドンドンと叩き実力行使。
普通に考えれば非常識極まりない。
しかし一緒にいるのは意思の疎通した双子の弟。


「開けて下さい!!どうしても今すぐ必要なんです!!」


浩司も同じ行動に出る。
そしてしばらく経ちゆっくりとシャッターが開いた。
怒り気味の店主。
まぁ当たり前なのだが。

「もうとっくに閉店してるんですけどね。」

「夜分遅くに申し訳ないです。
花見せて貰っちゃ駄目ですか・・・?」

「お願いします!!!!!」


「・・・早くしてくれな。」


和幸と浩司の真剣な眼差し。
渋々店主は頷く。
顔を見合わせ双子は笑顔で中に入る。


「やっぱ年の数だけバラとかか?」

「うん。すいません、バラ18本ありますか?」

「バラはうちの人気商品だからね。
もう朝すぐに売り切れるんだ。残ってるバラはあれだけ。」

店主の指差す方向には100円とかかれたピンクの小さいバラが。
落ち込む和幸と浩司。

「これ18本じゃ花束にもならねえな。」

「どうしよう・・・あ、こうなったら。」

「多分意見一緒。質より量だろ!?」

「うん、10倍でお金ギリ。」


「「 オジさん!! 」」


「ん?」




「「 そのバラ180本下さい!!!!!!!!!!! 」」










ピンポンピンポンピンポン♪


「何よ〜こんな時間に。」


時刻はもうすぐ12時になろうとしている。
そんな深夜に何回もチャイムを押され、
は少々不機嫌気味に玄関に向かった。
そしてチェーンを外す。
開けようとする前に外側の方から強い力で扉が開き、
その瞬間





「「 !!18歳の誕生日おめでとう!!!!!!! 」」





の目の前には視界が塞がれる程のバラ。
送り主の顔すら完全に隠されている。
しかしこのダブった声で分からない訳がない。


「和幸と浩司!?」


そう言った瞬間バラは二つの束に別れ真ん中から顔が現れる。
ニッと笑う森崎ツインズ。

「間に合ったー!!」

「今日だけは浩司のスピード違反も怒れないな。」

「当たり前だろ?」

軽く双子で会話したあときょとんとするの方を見る。
和幸は頭を下げる。

、ゴメンな。誕生日さっきまで忘れてたんだ。」

「そんなの全然気にしないのに…ワザワザ来てくれたの?」

「ああ。」

「言うのなんかいつでも良かったのに・・・」

「良くねえよ。」

浩司が即答する。
そして2人はに花束を渡した。



「「 の誕生日は今日なんだからさ。 」」




こうしては素敵なプレゼントで誕生日の最後を締めくくった。



END☆



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