「1週間絶対安静の入院だって。」


とある国立病院。
個室のベットにダルそうに寝ている松田直樹に
彼女であるは溜息をついて言った。
ベットから起き上がろうとする直樹。

「こんなん入院する程のことじゃ…」

「何処がやねん、熱40度出して練習中にぶっ倒れたのは誰や?」

「それにしてもまさか肺炎とは・・・」

見舞いに来た奥 大介と波戸康広が言う。
そう、直樹の病名は風邪による肺炎。

「直樹無理し過ぎなんだよー。」

「せやで?ちゃんに心配かけんなや。」

「まぁとにかくマツお大事にな?」

「どーも。」

直樹はまたベットに寝転ぶ。
腕に刺された点滴の針が邪魔そうだ。
帰ろうとするマリノス2人の後をも追う。

「あ、あたしも明後日また来るね!!」


「ん。・・・・・・・明後日!??」


の言葉に飛び起きる。
きょとんとする3人。

「どうかしたの?」

「明日は・・・?」

「ゴメン、ちょっと忙しくて。
夜には来れるんだけど面会時間終わってるでしょ?」

覚えて・・・」

「へ?」

「いや、何でもない。」

何か言いかけてやめる直樹。
は変なのーと首を傾げる。
康広と大介はフォローに。

「まぁ寂しいからってそう凹むなよ。」

「俺らが明日も来たるさかいに。」

「いや、それは結構です。」


「「酷っ!!」」








「俺結構病院の雰囲気好きだな。」


翌日。
練習の始まる1時間ほど前の午後12時。
手にサッカー雑誌を持ち康広が病院を訪れた。
大介が来れるのはは面会時間ギリギリの夜6時頃になるらしい。
階段を登り『松田直樹 殿』とかかれた病室へ。
ガラッと扉を開ける。

「ういーす、案の定康広君遊びに来ましたよ。」

「呼んでねぇー。」

その声に即反応が返ってくる。
康広は笑うとベットの横の椅子に腰掛けた。

「調子はどうなん?」

「熱が下がらねえんだって。今39度。」

「おいおい、ヤバイんじゃないのかソレ。」

「俺的にはもう元気なんだけど。」

病状を把握してないらしい直樹。
康広は買ったサッカー雑誌を直樹に渡す。

「無理すんなよ?
あ、この本マツの特集やってたから買ってきてみた。」

「恥ずいじゃんっつーか映り悪っ!!」

開いてすぐに本を閉じる。
苦笑する康広。
直樹は唐突にボソッと言う。


「今日退院出来ねえかなー・・・」


康広は手をクロスさせて罰点マーク。

「さすがに昨日の今日じゃな。
別に明日明後日はオフだし試合気にする必要ないぞ?」

「いや、今日じゃないと駄目なんだ。」

「・・・何が?」

康広が聞いた瞬間に携帯が鳴る。
どうやら練習時刻を知らせるアラームらしい。

「あ、悪い。練習行ってくるわ。
夜大介来るって言ってたから、俺も行けたら行くよ。」


「・・・了ー解。じゃな。」









「あーホンマしんどかったわ。」


6時。
練習を終えた大介が背伸びをしながら病院内を歩く。

「だからってエレベーター使うなよ(笑)」

どうやら康広もまた来たらしい。
2人で直樹の部屋に入った。
直樹はシーツを全身に被っているようだ。

「マツー熱下がったん?」

「寝てるのかもな。」

反応がないのでそう予想する康広。
大介は直樹の上におぶさる。

「折角来てんだから起きようやって・・・・ん?」

「どうした?」

いきなり首をかしげる大介。
康広が尋ねる。

「もしかして・・・」

大介はシーツを剥ぎ取った。



「「 マジで!!!!!!!!???? 」」



目を見開く2人。
なんとベットの中にいたのは直樹ではなく、
枕と紐で縛られた布団だった。
シーツを被せればハイ、人型の出来上がり。


「マツ何処や!!!???」


慌てて廊下に飛び出す大介。
康広は冷静にナースコール。
事情を聞いた看護婦達が部屋に駆けつける。

「早く見つけないと!!
マトモに立ってられない位熱凄いんですから!!」

「お2人共、松田さんの行きそうな所知りませんか!?」

看護婦の質問に顔を見合わせる大介と康広。
その康広は昼間の会話を思い出そうとする。

「そういえばアイツ今日絶対退院したいって・・・」

「つー事は完璧に脱走やな。」

「俺練習でその理由聞き損ねたんだ。」

「何でやろ・・・」

その時部屋にまた1人の看護婦が入って来た。
手には携帯を握っている。

「コレ玄関の所に落ちてたんですけど・・・」

「それ間違いなくマツのだ!!」

「ちょい貸して貰うで。」

スケジュール機能を呼び出し日付を確認。
中身を読んだ瞬間に直樹の脱走に納得する。

「それでちゃん帰る時今日来れない理由聞いてたのか・・・」

「言ってる場合ちゃうやろ!!
早いとこちゃんに電話せんと!!!」








「はい、もしもし・・・って、奥君?」


自宅にちょうど帰って来たは、
直樹からの着信に出た。
しかし声の主は大介。

ちゃんとこマツ行ってへん!?』

「来る訳ないよー今入院中なんだもん。」

『いないんや。』


「へ!?」



『マツの奴病院からいなくなったんや!!』



唖然とする
電話は康広に代わる。

『マツは絶対ちゃんのとこに向かってるはずなんだ。』

「何で・・・」

『本人なのに忘れてるのか!?』

「え?」




『今日ちゃんの誕生日だって!!』




やっと気付いた様子の
昨日今日は直樹の事や仕事で思い出しもしなかった。
は電話を切るとすぐに家を出た。

「直樹・・・」

マンションの階段を降り前の道路を左右と見回す。
しかし人の姿は見当たらない。
そう思った瞬間。



「やっと着いた。」



後ろから抱きしめられる。
振り返るとそこにいたのは勿論直樹。
顔を真っ赤にしてそうとう辛そうにしている。

「何やってんのよ!!
途中で倒れたらどうするつもり!??」

涙が溢れてくる。

「だって・・・今日病院来れねえとか言うからさ。」

「だからってこんな体で家来て自分の体分かってるの!?」

「すーいーまーせーんー。」

「これから病院戻るからね?」

。」

「何?」




「誕生日おめでとう。」




「・・・ありがと。」


涙を拭って素っ気無く言うに力なく笑う直樹。


「良かった、今日中にこれだけは言いたかっ・・・た。」


そして言った瞬間の方に倒れる。



「「・・・セーフ。」」



そのの後ろから息切れした康広と大介が直樹を支える。
どうやら2人も電話の後の家に向かったようだ。

「いくらちゃんの為やからって此処までするか?」

「惚れてるもんは仕方ないんだよ。
あ、やっぱまた熱上がってるっぽい・・・」

意識のない直樹の額を触り康広が言う。
やれやれと一息つく大介。



ちゃん、取りあえず直樹部屋で看病したってくれや。」




直樹はこの日42度という熱をマークし周囲を混乱に巻き込んだ。
しかし彼氏の命がけのお祝いメッセージに、
にとっては忘れられない誕生日となるのだった。


END?


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