Shoot!! 17蹴


「練習試合かぁ・・・」


夕食も終わり明日に備えて選手達が早めに床に就いた頃。
は日常化している体調管理表をまとめながら呟いた。
練習試合に立ち合うなんて初の経験。
出張のようなものの為医療道具に不備があってもまずい。
もう一度持ち物のメモを確認。

「包帯と湿布でしょ?コールドスプレーに・・・」



コンコンッ。



その時誰かがの部屋のドアをノックした。
何だろうと言う風に歩いて行く。

「はい。」

「あ、俺だけど、伸二。」

「小野さん?!どうしたんですか?」

突然の訪問に驚きつつガチャリとドアを開ける。

「ちょっと言いたい事あったんだけど寝てたなら御免!」

「あ、大丈夫です。起きてましたから。
良かったら入って下さい。」

伸二を部屋の中に案内する
そして椅子に積み重ねてあるプリントをすぐにどけた。

「仕事中?そんならもっとゴメン!!」

「いえ、ホントに気にしないで下さい。
すぐコーヒー出しますから。」

「あ、いいって。すぐ終わるし。」

立ち上がろうとするを制すように伸二が言う。
そうですか?と返し姿勢を元に戻す

「明日は静岡産大付属との練習試合ですね。」

「そうだよな、久々の試合だけどさ、俺出らんないし。」

「あ・・・」

伸二の腹痛を思い出し俯く
しかし伸二は気にしていない様子。

「あ、でも俺全然落ち込んだりとかしてないからさ。
要はW杯までに治せば良いんだし。」

「はい、W杯では小野さんのプレー期待してます!!」

「マジ?ちゃんと見ててくれる?」

「勿論です!!皆さんで頑張って下さいね?」

伸二のプラス思考にも笑顔で言う。
しかし腑に落ちていない様子の伸二。

「そうじゃなくて・・・」

「はい?」



「試合ではさ、俺だけを見てて欲しいなって。」



きっぱりと言う。
首を傾げる。鈍すぎる。

「小野さんだけを・・・ですか?」

「うん。俺絶対良いプレーするから。
それを好きな子に見ててもらいたいなって。」

「好きな子?」

「そ。」



「俺の好きな子はちゃん。」



垂れた目のお陰で一層優しく見える伸二の表情。
此処までさらりと言われるとどう返して良いかも分からない。
伸二は立ち上がる。

「だからW杯終わるまで俺は返事聞かないよ。
プレーで俺の気持ち分かって欲しいし。」

そう言うと伸二は夜遅くにゴメンと謝り部屋を出て行った。
今日だけで3人目。
潤一に言われた事を思い出しながらもまだ信じられない。
やっぱり生まれる疑問はコレ。


「あたし皆に好かれるような子じゃないのに・・・」









「・・・・さて、終わった。寝ようかな。」


が背伸びをして言う。
しかし辺りを見回しぎょっとする。
仕事を始めたのが午後10時。
寝ようかなと思った今が午前5時。
気持ちを絶つ為に仕事に没頭していた結果徹夜してしまったのだ。


「嘘・・・もう今日試合!?」


今から寝れば起きられない。
そう確信したは着替えて部屋から外に出た。
もう試合の準備をしてしまおうと考えたのだ。

「これが試合用ユニフォームでしょ?」

大きなバッグに必要な物を揃えていく。
しかしさっきから気になっていた事。

「何だろうあの音・・・」

外から壁に何かをぶつけるような音。
こんな時間に選手が練習している訳がない。
不思議に思ったが立ち上がり窓を覗く。



「楢崎さん!??」



いたのだ、練習している選手が。
そう、GK楢崎正剛。
仕事を放り投げグランドへ向かう


「お早う御座います。」


の声に振り向く正剛。

「・・・お早う。早いなホンマに。」

「それはこっちの台詞ですよ?
何時から練習してたんですか!?」

「・・・4時。」

汗だくで答える正剛。
既に1時間は経過してる事になる。
練習と言っても壁にぶつけて取るというような簡単なもの。
しかし1時間もぶっ続けでやればさすがに疲れる。

「スポーツドリンク持ってきましょうか?」

「いや、ええよ。それより・・・」

「へ?」

「ストレスとか溜まっとらん?」

いきなりの発言に驚く

「ストレス・・・?」

「こいつ殴りたいとか・・・自分に腹が立つとか・・・」

自分に腹が立つ。
それはあった。
告白されてるのにそこから逃げようと仕事をしてる自分。
素直に答える

「あり・・・ます。」



「じゃあ思い切り蹴って。」



そう言ってサッカーボールを渡す正剛。
貰ったボールを見てから正剛の方を見る。
既にゴール前で準備万端の様子。

「え?え?楢崎さん・・・?」

「いや、だから力一杯シュートして欲しいねんけど。」

「あたしなんかがやっても相手になんか全然・・・」



はストレス発散になるやろうし、
俺はハイボールの処理の練習になる。一石二鳥やろ?」



何気に顔がほころぶ
正剛の優しさにかなり感動したのだ。
ボールを芝の上に置き、少し距離を取る。
やる気を出したの態度を見て正剛にも気合が入る。


「じゃあ楢崎さんお願いします!!!」








「あ、6時半。楢崎さん皆起きちゃいますよ?」


自分の腕時計を見て言う
余裕で分かったと答える正剛。
はもう立っていられない位力を使い切ったという感じだった。
徹夜明けにこんなハードな動きをしたのだから当たり前。
しかし気持ちはかなり爽やかだった。
やっとの持ってきたドリンクに口をつけ正剛が言う。


「で、調子はどうなん?」



「凄くすっきりしました。有難う御座いました!!」



結局シュートは1本も入らなかった。
だが手加減しなかった正剛に感謝し、
良い体勢で試合を迎えられそうなだった。





はい、今回は小野さんです。
いやーもうネタがない・・・(笑)
ナラさんも出しました。
理由はさっきまで新聞読んでたので(爆)


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