Shoot!!28蹴

「痛った!!!!」


午前中の練習開始。

始まった瞬間腰を押さえて浩二が膝をつく。
横にはコロコロと転がるサッカーボールが。
涙目でそれが飛んできた方を睨む浩二。

「パンダの奇襲第2弾・・・」

「そ、俺意外に執念深いんよv」

ニヤッと笑うのは勿論この人。
マスク宮本。
朝食での出来事をまだ根に持っていたらしい。
見ていた潤一や崇史は危険を察知しその場から逃走。
またもや騒がしい光景が展開される。
しかしその場にはおらず、
1人宿舎内の自分の部屋にいた。

「明日にはあたし此処にいないんだよね…」

叔母に言われ早めに帰宅の準備をする。
鞄に服やトレーナーをやってまとめたノートなどを
詰め込みながらの独り言。
そう、明日はW杯開幕と同時にがこの
代表チームでのトレーナー見習いを終える日だ。
寂しさに浸るの部屋が軽くノックされ開く。

「あの、様ですよね?」

「はい。あの、どうかしましたか?」

入って来たのは宿舎の仲居さん。
本人かを確認するとニコッと笑う。

「選手の皆さんが送別会を開きたいと
おっしゃいますので、好物を教えて頂きたいのですが。」

「送別会?」

「はい、それはもう豪勢なのをやりたいと。」

の胸に感動がこみ上げてくる。
W杯目前でこんなにも切羽詰る状況であるのに
自分の事を考えてくれている。
は笑顔で返した。

「有難う御座います!!
でも、折角ですが遠慮させて下さい。」

「え?」

驚いた様子の仲居。
まさか断られるとは思わなかったからだ。
はお辞儀してから続けて言う。

「私には勿体ないです。
なのでその分・・・」

「その分?」



「W杯で一勝。初の勝利をしたら、
私の分まで盛大に選手達を祝ってあげて下さい。」



それが自分にとっての最高の送別になる。
の断った理由に仲居はそうですかと
頷くとお任せくださいと微笑んで部屋を出て行った。







「そっかぁ・・・」


練習中のほんの少ない休憩時間。
仲居からその話を聞いた日本代表のメンバーは
悲しいような納得したような微妙な顔つきをした。
ボソッと呟く敦の方を見るのは満男。

「でも、なんかちゃんらしいスよね。」

「・・・そうだな。
最後まで俺らの事ばっかり考えててくれる。」

「あ、分かりました。
じゃあ送別会の話はキャンセルで。」

の意図を理解して英寿が仲居に言う。
そして仲居が去っていくと、
選手達はゴロンと芝生の上に寝転んだ。


ちゃんて凄い優しい気がする。」


空を見ながら智和が誰ともなしに話しかける。
両サイドでうんうんと頷くのは大祐と直樹。

「同感ス。俺が軽く怪我した時も
本気で心配してくれたし・・・」

「俺も。彼女との喧嘩話とか弱音とか
真剣に聞いてくれて相談のってくれた。」

「せやな。俺がコレで滅入ってた時も
励まそうとして色んな事やってくれたわ。」

恒靖がマスクを指差しにこやかに便乗する。
上半身を起こすのは伸二。

「W杯も絶対応援しますからって。
俺はそれだけでやる気満々になったし。」

「俺は調子良いっていうのすぐに見抜いてくれて
・・・プレーもきちんと見ててくれてんだって感動した。」

パンパンと敦が足を軽く叩く。
皆それぞれがこの短い間にとの思い出をつくったらしい。
まとめるのは隆三。

「つまりさ、ちゃんて良い子なんだよな。」

「だな。技術面でのサポートだけじゃなくて、
どっちかっつーと精神面で元気くれるっつーか。」

「おお、タカさん的確!!ちゃん
全身から良い人オーラ出てますやん。」

「イナ何だよソレ。
でもちゃんてそれが嫌味な感じしないよな。」

笑って突っ込む能活。
そして叔母の笛と共にまた練習再開を迎える。
立ち上がってある事に最初に気付いたのは雅史。

「さて、やりますか☆って・・・コージは?」

「ホントだ。
さっきまで此処にいたたはずなのに。」

崇史がきょろきょろと辺りを見回す。


「何処行ったんだ・・・?」








ちゃん!!!」


外の特設練習場へと続いている裏玄関。
荷物の準備を終え最後のトレーナーの仕事へと
向かうの所に浩二はいた。

「浩二さん!!何かあったんですか??」

慌てたような様子の浩二にの表情は不安げになる。
何度も首を横に振る浩二。

「いや、何もないんだけど・・・あ、でも
俺にとっては・・・って何言ってんだろうな俺。」

頭を掻く浩二にクスっと笑う

「変な浩二さん。
でもその面白いとこ浩二さんの良い所ですよね。」

「それ褒めてる?
あ、ちゃんの良い所は優しいとこだよな。」

「へ?」

はいきなり自分の事になりきょとんとする。

「さっき皆でちゃんの話してたんだ。
俺も思うよ、ちゃんて凄ぇ優しいって。」

「そんな事ないで・・・」

その瞬間浩二はを抱きしめた。
そして皮肉交じりに一言。



「優しいよ。・・・・・誰にでも。」



自分の置かれている立場が理解出来ず
戸惑う

「え?あのっ///」

「さっきイチやツネさんとかからちゃんの事聞いて。
大人気ないんだけどさ、嫉妬した。」

「浩二さん・・・?」


「その優しさを俺だけのものにしたいって。
それって我が儘かな?」


浩二の腕の力が更に強くなる。




ちゃん。・・・俺だけの特別になってよ。」




そしてゆっくりとを解放する。
は固まったまま。
浩二は続けて言った。

「返事夜までは待つから。
えー前向きに考えといて下さい!!」

最後にはいつもの明るい浩二を見せ、
練習に戻っていく。
はそこから動くことが出来なかった。



はい、フラット3二人目コーディー!!!←テンション高
ちょいシリアス気味のつもり。ってかもどき。
意外にもうすぐ終わるかもって感じです。


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