Shoot!! 9蹴
「今頃タカさん告白してんのかな・・・」
施設内の一室。
ベットの上で、伸二は言った。
「そりゃ、そうなんじゃねえの?
隆三が嘘言う理由もないしな。」
同室、壁におっかかるように床に座った崇史が返す。
食後別に打ち合わせた様子もなく、
伸二は崇史の部屋に自然に入ってきたのだ。
何故か部屋に電気はついていない。
二人は溜息をついた。
「ちゃんがもしOKしてたら・・・」
「それはないって!・・・会ってまだ約二日。
ちゃん即OKするような軽い子じゃないだろ。」
暗そうな伸二に崇史が強めに否定する。
その崇史の声のする方に顔を上げる伸二。
「フクさん。」
「ん?」
「なんかソレ・・・自分自身に言い聞かせてないスか?」
一瞬の沈黙。
少し笑いながら慌てて言う崇史。
「んなっ、んな訳ねえじゃん!!
確かにちゃん可愛いし良い子だけど・・・」
「そうなんスよね。
たった1日一緒にいただけで良さが分かっちゃうっつーか。だから・・・」
「だから?」
「だから、タカさんがすぐに告っちゃうのも俺は分かるなーって。」
どう言っていいか分からず、黙り込む崇史。
そこにバタッと大きく扉が開いて浩二が入って来る。
「フクさん風呂空きましたって・・・暗っ!!」
「コージか。俺は後でいいわ。」
「あ、じゃあ俺入ろうかなーフクさん先失礼しまーす。」
そして伸二は浩二と部屋を出て行った。
また静かになった部屋。
崇史はボーっと考えていた。
隆三から隆行がに告白すると聞いた時の言い知れぬ不安感。
伸二に自分自身に言っていると言われた時、図星のような気がした事。
小さな声で呟く。
「俺も・・・ちゃんに惹かれてんのか・・・?」
「・・・信じられないなぁ・・・」
旅館にある大きめな庭。
晴天だったおかげで夜空に綺麗に映える星を見ては言った。
勿論頭の中は数分前の出来事で一杯。
そのの肩を後ろから誰かが叩く。
「何が?」
「とっ戸田さん!」
がビクッとしてから後ろを振り返る。
そこにいたのは和幸。
の驚きように微笑しながら言う。
「ばんわ。夜遅くに庭にいるなんて誰かと思った。」
「あ、ちょっと風に当たりたくて・・・
戸田さんこそ何かあったんですか?」
「俺は静かな所好きだからこの時間帯結構此処にいるんだ。」
「御免なさい、邪魔しちゃいました?」
「そんな事はないよ。美女と二人ってのも一興!」
明るく言う和幸にも笑みを漏らす。
そのを横目でチラっと見て聞く和幸。
「ちゃん、何か・・・あった?」
「え?!・・・何でですか?」
「んー俺の勘?ってかさっきから表情硬いからさ。」
和幸の鋭さに驚嘆する。
「何かあったって言うか・・・」
「詳しい事は聞かないけどさ、
真剣に悩めば悩むほど答えなんか出てこないもんだよ?」
「戸田さん・・・」
「ある時さ、何か急に悟ったりみたいな事ってあるしな。
あとこれは俺の個人的な意見なんだけど・・・」
「はい?」
「折角姉さんの下で面白い経験やってんなら、
今は俺らの事考えてて欲しいなーって。」
少し伸びた髭を触りながら和幸が言う。
それはにとってかなり嬉しい言葉、救われる言葉だったのだ。
このままだったらずっとどんよりとした雰囲気のままになってしまう。
それは自分にとっても隆行にとっても良い結果ではないだろう。
さらに『俺らの事』この和幸の言葉で使命感という物を感じられたのだ。
「そうですよね・・・有難う御座います!!」
「へ?」
「何か戸田さんのお陰でモヤモヤしてた物が吹っ切れた感じです。」
「俺何もしてないんだけど??」
「あたしも今思ったんです、選手の皆さんの事ちゃんと理解したいって。」
「それは有難いね、ちゃん良いトレーナーになれるわ。」
元の笑顔に戻った様子のを見て和幸も笑う。
そこでハッと忘れてた事に気付く。
「あ!!やばっ、ツネがちゃん探してたの忘れてた!!」
「え!?」
「卓球したいとか言ってたな。話すのに夢中で度忘れ(笑)」
「じゃあ、あたし行かなきゃ!!戸田さん、どうもでしたv」
満面の笑みで旅館の方へ戻って行く。
その後姿を見送りながら和幸が呟く。
「こりゃ皆惚れるわけだ。」
和幸はすでに選手の大半がに好意を持っている事に気付いていた。
それを再認識したらしい。
「でもまぁ、なるようになるだろ。」
和幸の今の言葉。
さっきのふっきれたも同じ考えにたどり着いたのだった。
はい、甘くなり続けてくれてるかな?
今回は結構靖樹が好きな福西さん、そして、
相談役にはこの人って決めてた戸田さんを出してみました★
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