「明日俺をスタメンに使って下さい!!!」


埼玉県浦和レッズ練習場。
明日に控えた対ベガルタ仙台戦を前に
田中達也は監督に頭を下げた。
周りにいた選手達も驚いた表情を見せる。

「いきなりどうしたんだ?」

首を傾げるのは達也と同じく若手FW永井雄一郎。
達也は雄一郎の方を向く。

「俺明日絶対得点しなきゃなんないんです!!」

「いや、うん、まぁその意気込みは有難いけど…」

「とにかく沢山チャンスが欲しいんです!!」

迫力満点の達也に部屋の端から鈴木啓太が言う。

「タツヤぁ、明日トゥットさん出場停止だぞー。」

「へ!?マジですか!?」

すっかり忘れていたようできょとんとする達也に啓太は頷く。

「明日はお前と永井さんとエメさんの3トップじゃねえ?」



「よっしゃ
――――――――!!!!!!!!!!!!」



啓太の言葉に絶叫して喜ぶ。


「明日は俺にどんどんパス下さい、絶対決めます!!
あ、俺準備しなくちゃ・・・」


笑顔で言うと達也はダッシュで部屋を出た。
頭に疑問符を浮かべる雄一郎。

「何でタツヤはあんなに張り切ってるんだ?」

「俺理由知ってますよ。」

「啓太、何?」



「明日達也の彼女の誕生日なんス。」



雄一郎は腕を組み何か考えている様子。

「彼女ってあのよく練習観に来る凄い可愛い・・・」

ちゃんて言うんスよね〜。」

「その彼女の誕生日が達也の気合と関係あんの?」

「大有りですよ。内緒なんですけど、
達也の奴明日の試合仮病使おうとしてたんです。」


「仮病!!??」


どうにかしてレギュラーを取りたいはずの達也が仮病。
雄一郎はますます不思議がる。
啓太は続けた。

「どうしても一緒に祝ってやりたいからとか言って。
でもそのちゃんに説得されて渋々諦めたらしいスけど。」


「そりゃまた・・・達也にベタ惚れされてんのな。」


2人で苦笑する。
そこで雄一郎は思い出したように


「あ。なぁ啓太、達也の言ってた準備って?」


その質問に啓太はニヤリと笑った。

「試合で達也がシュート決められたらッスけど。」

「うん。」



「・・・面白いもん見れるかもしれませんよ?」









「良いのかな、こんな席座らせて貰って・・・」


そして翌日。
達也からチケットを渡されたは埼玉スタジアムに来ていた。
チケットを見せると何故か一人だけ案内される。
場所はゴール裏の一番前。
ファンからすれば絶好の位置だ。
は申し訳なさそうに呟いた。
その直後ピッチに選手が入場してくる。

「あ、達也スタメンじゃん!!」

やる気満々で目を輝かせる達也を見つけて
彼女であるも自然に笑みが零れる。
そして試合が始まった。




「あー・・・またカットされちゃった。」

試合が始まって15分。
残念そうにが言う。
浦和は啓太を基点に攻めるも中々得点に結びつかない。
達也も必死に走るがそこまでパスが回らないのだ。
そして両者無得点で前半は終了。







「小村さんがホント厄介だな。」


ロッカールーム。
ハーフタイムで雄一郎はボソッと言った。
さすがに日本代表に招集された事だけある。

「後半エメさんや永井さんよりはマーク薄いと思うんで、
俺タツヤに球集めようと思うんスけどどうすか?」

啓太の提案。
雄一郎は頷く。

「俺は良いと思う。
今日の達也は何かやってくれそうだしな。」


・・・別の意味でも。


しかし声には出さない。
達也の表情は真剣そのもの。



「俺滅茶苦茶張ります!!!!!!!!!」







――――!!!


そして後半開始のホイッスル。
断言通り啓太は豪快なロングパスを達也の方にあげる。
得意のドリブルで相手を翻弄してシュート。
だが


「あー、達也惜しい!!!」


悔しそうな
達也のシュートはポストのほんの少し左に逸れてしまった。
仙台MFが疲れて来たようで啓太の縦パスは前半よりもよく通る。
まだまだチャンスは沢山ある。
も1サポーターとして大声で応援した。
しかし後半の終わりが近づいても0−0のまま。
浦和はシュートを何本と打つもどうも正確さに欠ける様だ。
ついにロスタイム1分の表示。
誰もが延長戦突入を予期しただろう。
仙台の選手もボール回しに入っている。


「・・・最後の攻撃だな。」


啓太はそう呟いた瞬間ボールをスライディングで奪った。
浦和サポーターにまた熱気が蘇る。
達也へのパスが読まれて来ている為啓太は雄一郎にパスを送る。
上手い具合に受け取りドリブルでDFを抜いていく。
ペナルティエリア突入。

「ちっ。」

舌打ちする雄一郎。
仙台のDFがどんどん戻ってくる。
当たり前だ、あっちも真剣なのだ。
雄一郎がヒールで後ろに戻そうとした時



「永井さん!!!!!!!!」



振り返る雄一郎。
達也が逆サイドから切り込んできていたのだ。
時間は残り数秒。


「タツヤ、頼んだ!!」


絶妙のアシストを上げる。
達也はヘディングをGKの横に叩き込んだ。
場内アナウンスが響き渡る。



【ゴ
――――――――――――――ル!!!!!!!】



埼玉スタジアムは熱狂の渦となった。


「達也―――――――!!!!!」


も立ち上がって狂喜する。
達也はダッシュでの方へ走ってくる。

観てた!!??」

「うん!!凄い格好良かった!!!!!」

お互いにVサイン。
更に達也はユニフォームを脱いで後ろを向いた。
その光景に目を見開く
無理もない。
達也の背中には太いペンで



『 HAPPY BIRTH DAY!! 』



3行にわたって大きくそう書いてある。
何事かと思うサポーター達に対しは顔が真っ赤。
達也はニッと笑う。


「これからも大好きだからな!!」


「っ・・・馬鹿!!」






「アイツ馬鹿だ。」


達也の行動に即行で言う雄一郎。
その隣では爆笑している啓太。

「ね!?面白くないスか!??
永井さんナイスアシストでしたよー。」

「まぁ勝ったから良いけどな。それにしても・・・」

「はい?」



ちゃん死ぬほど恥ずかしいだろうな。」



不憫そうに雄一郎が言う。
あははと笑って啓太は返す。



「達也に好かれちゃった運命スね〜。」



新聞の一面はこの達也の背中の写真。
浦和の勝利は思い切り霞んでしまたのを
啓太と雄一郎が知るのは翌日のことだった。



END?



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