PiPiPi…PiPiPi…Pi

ガッ！！

軽快に鳴る目覚ましの音。
それを暴力的に叩いて止め、
は目を擦りながら寝ぼけ眼で時計を見た。

「…まだ８時じゃん。折角の夏休みなのに
何でこんなに早くセットしたんだろ？…寝よ。」

そして再度布団を被る。
意識が薄れ始めて１５分。
は何か忘れている事に気付いた。
夏休み初日。


「あー！！！今日からバイトだった！！」


INSIDE　＊0＊


「ごめんなさい！！寝坊しました！！」


普段横浜Fマリノスの練習場となっている
戸塚トレーニングセンター。
大学も夏休みに入った今日から、
は此処でアルバイトをする事になっていた。
慌てて控え室のドアを開ける。

「初日から遅刻なんてええ度胸してるなぁ。」

ある程度予想はしていたが部屋に入った瞬間
悪態をついて来るのはキャプテン奥　大介。
自分が悪いと分かっていつつもムッとする。

「すいませんって言ってんでしょ？
おっくん嬉しそうな顔し過ぎ！！」

「ははっ、確かにちゃんの言う通りかも！」

大介とのやり取りに笑いながら入るのは
若きDF那須大亮だ。

「那須、人の不幸は蜜の味言うやろー？」

「まぁまぁ、これから少しの間お世話に
なるんだから優しくしてあげましょうよ。」

「そうだよー那須君の言う通り！！」

「お世話にって…なんかただの雑用やん。」

「ただのってゆーな馬鹿奥！！」

頬を膨らませて大介の腹筋を叩くを見ながら
坂田大輔が不思議そうに隣にいる中澤佑二に問う。

「佑二さん、アイツ…えーとだっけ。
何でいきなりタメ語で二人と話してるんスか？」

「あれ？坂田知らないっけ？」

「何をスか？とにかく、まだ１８のくせに生意気スよ。」

「ちゃんは良いんだよ。特別なの。」

「はぁ！？何でなんスか！？？」

納得いかなさそうな大輔の顔。
佑二はクスクスと笑いながら大輔の反対隣を見た。



「あれな、俺の妹なの。」



へっ！？と素っ頓狂な声をあげて大輔がそちらを見る。
佑二と目を合わせて苦笑しているのは波戸康広。
そう、のフルネームは波戸。
康広の実の妹で、昔から兄のプレーを見ていて
サッカーにも詳しい事から此処で働ける事になったのだ。
驚いて瞬きを繰り返す大輔。

「え？アレ？だって俺一度も会った事ないっスよ？」

「ここ１年受験生モードだったから。
ユースの方には顔出してないし。」

「あーそれでか…」

「ちゃん来るとチームが明るくなるから良いスよね。」

と挨拶を交わしたようで戻って来たのは
チームの守護神エノタツこと榎本達也。
そうだなと佑二が頷いた瞬間


「すいません、凄っげぇ遅れました！！」


大きな音をたててドアが開き息を切らした男が入ってくる。
と同い年、新加入の阿部祐大朗だ。

「ユータロー重役出勤か？」

「大さん、ちがっ違いますよ！！
ちょい道が混んでて…ん？その子誰スか？」

大介に絡まれつつ祐大朗がの方を見る。

「あ、波戸さんの妹でちゃん。
今日からお手伝いみたいなのやって貰うんだ。」

「ちなみにお前とタメやで。
性格もわりと似とるかもしれんな。」

大亮と大介の紹介にも笑顔で自己紹介する。

「です、宜しく！！
あたしもユータローって呼んでい？」

「全然余裕。俺もって呼ぶし。
重役出勤同士仲良くやろーぜ！！」

初対面で意気投合。
が高校選手権を見ていた事もあり話を弾ませる。
その時またもやドアが。
入って来たのは監督岡田武史と日本代表松田直樹。
騒いでいたの動きがピタッと止まる。

「そろそろミーティング始めるからピッチに出ろー。」

監督のその一言にうーっすと返し選手達が次々部屋を出て行く。
直樹も同じ行動をしようとしたがを見て足を止めた。

「あーちゃんじゃん！久しぶり！！
大学受かったんだってな、おめでとう！！！」

「はい、無事合格です！！
今日から此処でアルバイトするんで宜しくお願いします♪」

「そうなんだ。おう、宜しく！！」

八重歯を見せニッと笑う直樹にの顔は真っ赤。
その光景を見てニヤニヤ笑う大介に首を傾げる大亮。

「何かちゃん大人しくなった気が…」

「そんなん当然やろ。」

「へ？」



「の奴波戸ちゃんがこっち来た時から
ずっとマツに惚れてるらしいで？」



うんうんと頷く康広。
この事実を知らないのはここ最近加入した若手だけのようだ。


「え…」


大亮の顔が一瞬だけ険しくなったのに気付く者はいなかった。

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大変お待たせしましたネット復帰です★
そして早速新連載（笑）
つい先日マリが新潟に合宿に来てそれを見てるうちにやっぱ
マリ好きを実感したしまして…で、書いてみましたｖ
最初っからちょい甘めですので楽しんで頂ければこれ幸い。
何か昼のドラマって感じかも（爆）
…にしてもダイスケ三人もいるなんて多すぎだよ畜生。