-Step- 4



「美味っ!!」

「不味っ!!」


選手村総合食事場。
沢山並べてあるバイキング式の料理に対して
同時に二つの意見が出た。
前者は青木 剛で後者は田中隼磨。
二人は顔を見合わせる。

「何処が美味いんだよこんなん!?」

「ハユこそ何処が不味いんだよ!?」

たった半日で味覚の違いが現れている。
気になる事が出来た隼磨は剛に尋ねた。

「タケ、そっちのお手伝いさんどんな人?」

「ん?何か典型的な肝っ玉母さんて感じの人。」

「料理は?」

「この反応見れば分かるっしょ?」

そう、お手伝いさんの担当は朝・昼食のみ。
夕食だけは此処で取る事になっているようだ。

「ハユんとこは?」

「滅茶苦茶上手いよ。
は味付けもバッチリだし。」

?」

剛が聞き返した瞬間隼磨の元に勇樹と和幸が歩いて来た。

「ハユー帰んぞ。」

「へ?もうスか?」

「皆辛さとか味にギブだって。
家帰ってちゃんに何か作って貰おうって事になったんだよ。」

その言葉に顔が明るくなる隼磨。
すぐに皿とフォークをテーブルに置く。

「賛成です!!すぐ戻りましょう!!」

「え!?ハユ??」

不思議そうな剛に勇樹が言う。


「タケも来る?うちのお手伝いさん見せてやるよ。」







「・・・・・・」


そしてわずか5分程で部屋に到着。
目の前の光景に剛は言葉を失った。

「あれ?皆さんどうしたんですか??」

慌てて玄関に走ってくるのは若く可愛い女の子。

ちゃん、何か作ってぇー?」

達也が早速お願いの上目遣い。
光も頷く。

「俺からも頼むよ。
バイキング食べれたもんじゃなかったんだ。」

「そうなんですかぁ。
でもどうしよう・・・冷蔵庫余り物位しか・・・」

「それで良い!!
ちゃんの味付けがあれば何とかなる!!」

嘉人は切実にそう言いソファに腰を下ろす。

「?タケ、どないしたん?」

玄関で立ち竦む剛の顔を大輔が覗きこんだ。

「あの、今の子がお手伝いさんなんスか?」

「せやで。」

今度は啓太が剛の肩に手を置きニヤっと笑う。


「良いだろ、うちのちゃん。」







「んーやっぱこの味だね。」


出来上がったチャーハンに舌鼓を打つ和幸。
お盆を胸にあてお辞儀する

「有難う御座いますv
青木さん、食べれますか・・・?」

初の別部屋の選手には少々心配気味。
剛はコクコクと首を縦に振った。


「すっっっっっっごい、美味いです。」


その反応に残りのメンバーも満足そう。

「あーあ、タケこれでもう他のとこで飯食えなくなるな。」

「別に良いんじゃないか?
席ならちゃんの隣空いてるし。」

勇樹の言葉に光が返す。
まぁタケなら。と言う事で渋々全員了承。
代表して嘉人が誘う。

「タケ、これから此処で夕飯食べてく?」

剛はおずおずとの方を見た。

さんさえ迷惑じゃなければ・・・」

ニコッと笑う


「あたしは全然構わないですよ?
8人も9人も一緒ですからv」







「お帰りー何処行ってたんだ?」


午後8時、青木 剛帰宅。
雑誌から顔を上げるのは池田昇平だ。
ビクっとしながらも平然を装う。

「え!?あ、あの・・・達也達のとこに。」

「20歳で唯一タケだけこっち来ちゃったからな。
あ、あっちどうだった?」

優しく聞くのは石川直宏。

「や、あんま変わんないスよ。」

本当は天と地の差だけど。
しかし帰り際の勇樹と啓太の言葉を思い出し口を噤む。


『安心した食生活を送りたいなら他の奴に口外するなよ?』

『喋ったら・・・・・・リンチ。』


背筋が震える。
ふーんと本に目を戻す昇平や黒河貴矢と会話を
再開する直宏に剛はホッと一息。
そこに浪速のゴンこと中山悟志が
何やら皿を持って台所から出てきた。

「よ、タケ。
冷凍のチャーハン温めたんだけど食う?」

「いや、俺は・・・」

よりによってチャーハン。
先ほど調子に乗って二杯半も平らげたのだ。
苦笑して遠慮する。
しかし

「へぇ・・・やさしい先輩が勧めてるのに断るんだ?」

「・・・頂きます。」

悟志からスプーンを受け取り一口。
噛み締めている間に昇平もつまみ食い。

「あ、結構イケんじゃん。」

「マジ!?タケは?」

「・・・・・・」

剛はダッシュで自分の部屋に戻ると荷物を持ってきた。
そのリュックを背負う。



「俺もう生きてる世界違うんス!!!」



「「「「 何いいいいぃぃぃぃぃいいい!???? 」」」」



突然出て行こうとする剛を
悟志・昇平・直宏・貴矢の4人が必死で止めたのは言うまでも無い。







「なぁ。」

「ん?」

「何で俺ら3人で風呂に入ってるんや?」


同時刻。
湯船に浸かった大輔は目の前で頭を洗う和幸に聞いた。

「時間ないからじゃないの?」

「そりゃ明日から練習やし、
早ぅ寝るの分からんでもないけど・・・」

「うん、狭いよね。」

不満タラタラ。
しかしさっきからずっと黙っている達也にぎょっとする。

「せめて二人にして欲しいって・・・達也!??
あかん!!コイツ完璧のぼせとるわ!!」

順番待ちでずっと潜っていた達也の目は虚ろ。
和幸も慌てて立ち上がる。

「嘘!早く風呂から出さないとって・・・目に液がっ、痛っ!!!」

「カズ、こっちに倒れるなぁ!!」


「「 ギャ
――――――!!!!! 」」







「・・・何か浴室騒がしくないか?」

「気の所為だろ〜?」


リビングでは穏やかに過ごす光と啓太。
そこに一番に入浴を終え首にタオルをかけた
勇樹が牛乳を持って歩いてきた。

「なぁ、今頃タケどうしてるかな?」

「どうしてるって?」

寝転びながら嘉人が聞き返す。

「いや、そろそろ悟志あたりが夜食でも作ってるんじゃないかなと。」

勘が鋭い。
そういう事かと光は納得した様子。
啓太は笑いながら言った。


「味の違いに耐え切れなくて脱走を謀ってたりしてな〜。」




・・・大当たり。




これでメインの選手は全て出しました!!
書いてて思ったんですが、
靖樹食べ物の話ばっかりですね(爆)


 

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